88キロになったとき、90キロ台を意識した。このままではいけないと思い、ジョギングを始めた。すぐに膝が痛くなり、全身の贅肉がぷるんぷるん。食事を減らすも、すぐにお腹がすき、気がついたら「今日はええ、明日からや!」の連続。
食事を制限しながらも、「飲みもんやったらええわ」と、ひたすらビール、焼酎、ワイン、晩飯は食事を抜いて酒オンリー。夜の食事を抜いた分、少し痩せたりもした。しかし、ストレスが溜まる。「たまにはええねん」と言いながら、から揚げには醤油とマヨネーズ、コロッケにはソースとマヨネーズ、ご飯には鰹節かけてその上から醤油をかけて刻み生姜山盛り、「これは体にええわー」と、ほとんど噛まずに流し込み「おかわり!」
2杯目は目玉焼きのせその上に醤油ドバドバ、さらにケチャップとマヨネーズ、パンパンに膨らんだお腹をさすりながら、体にええもんも食べとこう言うことで、キムチの盛り合わせ、ナムルの盛り合わせ、鳥皮ポン酢、などなど、居酒屋メニューのオンパレード。ビールはお腹が出るからと言うことで焼酎三昧、ワイン三昧。翌日、睡眠不足で目の下にクマを作りながらも根性論で早起きジョギング、「健康が一番です」などと嘘吹く日々。
健康診断で指摘される異常値と成人病を心配しダイエットを勧める家族。 深夜番組のコマーシャルで目にするムキムキの人たち。ドラッグストアや量販店で目にするダイエット食品。痩せたい、ダイエットしたいと思うにもかかわらず、なぜか食べる。食べた事は忘れて、我慢したことだけが頭に残る。
「朝は抜いたから夜は思いっきり食べよう。」
「夜は抜いたから朝から栄養をしっかりとろう。」
「お祝い事やからすべておいしくいただこう。」
「せっかくのお誘いなんやし断るのは失礼や。」
「いつもダイエットしてるから今日はご褒美。」
ダイエットに取り組む人の多くは言い訳のプロである。ありとあらゆる名ゼリフを頭の中で繰り返し、現状維持の日々。全てが三日坊主、全てが一回こっきり、次々と増えていくダイエット食品にダイエット用品。
だいぶ痩せたかなぁと思い、測ってみると85キロ。油断して食べて測ってみると、88キロ。食べた事はすっかり忘れてダイエットの思い出だけが蓄積される。気がつけば、膨らむのは、「悲しい暗示」と「思い込み」
例えば、「僕はおにぎり一個で3キロ太る。」「僕は水を飲んだだけで3キロ太る。」暗示がかかり、本当に太る。隣でガツガツ食べている普通の体型の人を見て、あの人も胃下垂かなぁ?普通の体型の人が全員胃下垂に見えてくる。太る気持ちは太る人にしかわからない。「明るいから太るのだ。」「健康だから太るのだ。」無理に自己肯定感を高めようとするが、何の喜びも感じられない。
太る、太る、太る、太る、
頭の中に繰り返される言葉は、「太る」こんな状態が数年続いてこの体になった。
内田達雄
Tatsuo Uchida
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