週刊GIGマガジン

2017年01月号 vol.41

編集後記(1/18)

2017年01月20日 01:30 by showky
 忘れもしない中学1年あたりの頃、何かと言えば本屋に立ち寄り、軽く2〜3時間立ち読みをしては、熟考に熟考を重ねて限られたお小遣いから本を買う中で、ある日に買って帰ったのが星新一の「きまぐれ博物誌」という単行本。
 だいたい僕が買うのは8割がたミステリ(それも海外物)なんだけど、たまたま友達の家で星新一の「きまぐれロボット」を読んだら、その斬新な発想のショートショートがあまりに面白くて、ちょっとずつSFにも手を出すようになったのね。
 好きになるとコンプリートしたくなるのが人情。ちょっとずつ星新一の文庫本を揃えていく中、たまたま何かの理由で図書券をもらったものだから、奮発して高価なハードカバーを買いたくなってその「きまぐれ博物誌」を選んだんだけど、珍しくほぼ中身を読まずに買って帰ったのよ。で、わくわくしながら家で読み始めたら、あらびっくり。それはいつものSFショートショートではなかったのね。未来社会も宇宙もエヌ氏もエス氏も出てこない、作家"星新一”の日常とさまざまな思考がアットランダムに書かれている、不思議な読み物。実はそれが僕にとっての初めての「エッセイ」体験なのでした。
 でね、やっぱり何でも初体験はのちのちまで大きな影響を与えるじゃない。読んだことのある人ならなんとなくわかると思うんだけど、星新一のエッセイって独特なのね。虚実とユーモアと毒と皮肉が、端正で淡白な文体でスパスパと脳に切り込んでくる感じ。後になって、他の日本の作家のエッセイを読んだ時に、そのあまりのテイストの違いに、それがエッセイとすら思わなかったもの。
 最近は日本映画もとても元気で、コンスタントに大ヒットも生まれて、確かにテレビでみたり予告編なんかですごく面白そうだなと思ったりもする。なのにラストシーンになって、ありゃりゃとがっかりするのは、きっと僕の初体験のせいなのね。星新一のせい。そんなに説明しなくていいのに、そんなにウェットにしなくていいのに。なんでみんなそんなにぼろぼろと泣き叫ぶのだ。星新一なら情景描写一行と台詞一言で済ませるぞ。
 僕が海外の小説を好んで読むのは、きっと英語なんかを日本語に置き換える時に、どうしても削り落とされるニュアンスがあって、ひどい時には表現がまるごと消えて、ただ場面や情景、人物、小道具を見せられながら、出来事の結末や背景を想像するのが楽しいからで、星新一の小説や文体がまさにそんな感じなのです。秘すれば花、なんて言い回しだと急に日本ぽくなるけれど。
 そのあたりのさじ加減はもちろん人それぞれだし、ヒットや人気の度合いからすれば僕の感覚の方がはるかにマイノリティーなのはよくわかってるのよ。それでも、クリント・イーストウッドのような、あんなに突き放した演出の映画でもアカデミー賞を獲って大ヒットするんだから、スタイルとしてそこはこだわっていきたいのよね。僕の場合はもちろん曲作りの中で、なんだけど。ほどよくわかりやすくてほどよく難解で、ほどよくさっぱりとしてほどよく味わい深い、軽快でポップなのに、ある時不意を突くように泣かされる、そんなのを目指したいと誓う2017年初頭でした。
 あ、そうそう、その「きまぐれ博物誌」は1970年頃に出版されてて、20年後の未来を描いた一編がありまして。その未来はもうすでに過去なんだけど、そう思って読むと当時の世相と空気が読み取れて面白いですよ。

冴沢鐘己


・1月22日(日)京都 ホテルオークラ「第5回 fm GIG アカデミー賞」
13:00〜16:00
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午後1時〜午後4時(正午より受付開始)
会場:京都ホテルオークラ 暁雲の間
京都市中京区河原町御池(地下鉄東西線「京都市役所前駅」直結)
会費:12,000円(テーブルビュッフェコース料理、フリードリンク)
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