アメリカのSF作家レイ・ブラッドベリの小説が、僕はとても好きなんだけど、だからと言ってSF小説全体が好きというわけでもないのね。星新一や光瀬龍、小松左京、筒井康隆なんかも好きだけど、いわゆるスペースオペラ系はあんまり読まないなあ。
ブラッドッベリは「ノスタルジーの作家」と呼ばれていて、もちろんSFだから舞台は宇宙へのロケットが飛び交う時代の話だったり、火星が舞台だったり未知の星だったりするんだけど、物語の中で一貫して語られるのは、とてもウェットでセンチメンタルなノスタルジー。懐かしい人、懐かしい故郷、懐かしい恋、懐かしい家族、そしてこれまでの自分の人生、そういったものが、とても美しい文章で語られるのです。
アメリカの広大さというのは、狭い日本に住む僕らにはきっと想像もできないほどで、テキサスやユタやオレゴンの田舎に生まれた人にとって、ロサンゼルスやニューヨークなんて、ほんとに別の国、別の星に行くくらいの感覚だと思うのよ。そして、いったん故郷を出て都会を目指したなら、そうは簡単に帰れなくて、まるで月を見るかのように遠い故郷のことを思うんじゃないかと。ブラッドベリは舞台を宇宙に移しただけで、だからこそ生臭い「現代」のリアルさを排除することで、故郷を離れた誰しもが持つノスタルジーを描いているから、全世界の人に愛されているのだと僕は思うのです。
日本では、わりと簡単に再開発の時に古い建物なんかを壊してしまうけど、アメリカやヨーロッパはできる限り歴史的な建物は残そうとしていて、おかげでイタリアに行った時なんか、「イメージ通りのイタリア」に出会えて感激したのよ。それはもちろん観光資源としての意味合いが大きいのだろうけど、もっともっと大事な感覚が実はあると思うのです。
遠い星、遠い国に旅立ってしまえば、記憶に残る故郷は昔のままで思い出に焼き付けられて、いずれ再び帰る日を夢に見るのね。そして無事に故郷へ帰る日が来た時、懐かしい景色が出迎えてくれた時の感動、あるいは変わり果てて面影もなくなった街を見た時の落胆、懐かしい人に再会した時のこぼれる涙、もう会えないとわかった時の寂しさ、そういったセンチメンタルをブラッドベリはなんども物語にし、またその想いに深く共感するからこそ、欧米人は古いものをとても大事にするのだろうと思うのです。
この時期、日本はお盆。僕の家は両親ともに兄弟が多くて、子供の頃の記憶のほとんどは、昭和の物語に出てくる大家族の風景そのもの。お盆や正月になると親戚がわんさか集まって、この時期ならみんなでテレビの高校野球に一喜一憂したり、大晦日ならレコード大賞の行方を予想しあったり。
もうなくなってしまって二度と戻らないものはいくつもあるけど、ささやかな思い出の端々を見つけて、忘れかけていたものを取り戻せるのも今の季節。とは言うものの想い出の国に帰って余生を過ごすのはまだまだ先の話なので、少しお休みをとってリフレッシュしたなら、またいろいろとフルアクセルで頑張りましょう。
冴沢鐘己
・8月20日(土) 京橋 ベロニカ【日台友好音楽祭】
料金:・2,500
出演:TIME FOR LOVE、小老鷹樂團(from 台湾)、Osaka Sweet Soul Quartetto、
ほか
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